トレムフィア

監修:慶應義塾大学医学部 名誉教授 日比紀文 先生

クローン病の内科的治療

主に栄養療法、薬物療法を行います。治療方針は重症度や患者さんの状態などに合わせて決めます。

栄養療法

栄養療法は、栄養状態の改善と腸管の安静に加え、腸管の炎症を抑えるために行います。

クローン病の栄養療法の種類

治療法の種類 特徴など
経腸栄養法
  • 鼻から胃または十二指腸まで経鼻チューブを通し、注入ポンプを用いて栄養剤を注入します
  • 寛解導入、寛解維持のために用います
  • 経口での摂取が可能な場合は、経口的に栄養剤を服用することができます
完全中心静脈栄養法
  • 胸部の中央にある中心静脈にカテーテル(細いチューブ)を挿入し、そこから栄養剤を投与します
  • 症状がとても強い場合、高度な狭窄がある場合、病変が広範囲に及ぶ場合に用います
  • カテーテル関連血流感染症、血栓症、肝機能障害、微量栄養素(ミネラル等)の不足・過剰症の発生などに気をつけながら行います

難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木斑):
クローン病の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識 第4版. 2020年3月改訂
(http://www.ibdjapan.org/patient/pdf/02.pdf)(2025年6月2日アクセス)
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(久松班):
令和6年度 改訂版潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和7年(2025年)3月31日改訂

薬物療法

薬物療法で用いる薬には、以下のものがあります。

クローン病の治療薬の種類

治療薬の種類 特徴など
5-ASA製剤
  • 腸管の炎症を抑える薬です
  • 主に軽症~中等症の患者さんで、寛解導入と寛解維持に用います
  • 経口剤があります
ステロイド
  • 腸管の炎症を抑える薬です
  • 軽症~重症の患者さんで、寛解導入に用います
  • 経口剤、注射剤があり、重症度に応じて使い分けます
  • 効果が得られた後は、徐々に減量して投与を中止します
免疫調節薬
  • 腸管の異常な免疫反応を調節する薬です
  • ステロイドが減量・中止できない場合に用います
抗菌剤*
  • 肛門周囲膿瘍(肛門周囲に膿がたまる)といった肛門部の病変がみられる場合に抗菌剤を用いることがあります
生物学的製剤
  • 中等症~重症の患者さんで、5-ASA製剤やステロイドなどこれまでの治療で十分に効果が得られない場合に用います
  • 抗IL-12/23抗体製剤、抗IL-23抗体製剤、抗TNF-α抗体製剤、抗α4β7インテグリン抗体製剤があり、それぞれ作用の仕方が異なります
  • 注射剤があります
JAK阻害薬
  • サイトカインの過剰な産生を抑える薬です
  • 中等症~重症の患者さんで、これまでに栄養療法や他の薬物療法(ステロイド、免疫調節薬または生物学的製剤)による適切な治療を行っても十分に効果が得られない場合に用います

* クローン病に対しては保険適用外

難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木斑):
クローン病の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識 第4版. 2020年3月改訂
(http://www.ibdjapan.org/patient/pdf/02.pdf)(2025年6月2日アクセス)
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(久松班):
令和6年度 改訂版潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和7年(2025年)3月31日改訂

血球成分除去療法

血液を腕の静脈から体外循環させ、カラムと呼ばれる特殊な筒に血液を通過させることで、炎症に関わっている血球成分を除去する治療法です。
栄養療法や薬物療法で効果が得られない場合やこれらの治療が使用できない場合で、大腸の病変による症状が残っている場合に用います。

難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木斑):
クローン病の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識 第4版. 2020年3月改訂

生物学的製剤とは?

生物が持つタンパク質を作る力を利用して製造された医薬品です。

生物学的製剤はバイオ医薬品とも呼ばれ、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術などのバイオテクノロジーを応用して、生物が持つタンパク質(ホルモン、酵素、抗体等)を作る力を利用して製造された医薬品です。
はじめは、体内で不足するタンパク質を補う目的で開発が始まりました。近年はがん、血液の病気、免疫の病気など様々な病気に対する生物学的製剤の開発が進んでいます。

クローン病に対して用いる生物学的製剤

中等症~重症の患者さんで、5-ASA製剤やステロイドなどこれまでの治療で十分に効果が得られない場合に以下の治療薬を用います。

抗IL-12/23抗体製剤 炎症を引き起こす生体物質であるインターロイキン(IL)-12とIL-23の作用を中和することで炎症を抑えます
抗IL-23抗体製剤 炎症を引き起こす生体物質であるインターロイキン(IL)-23の作用を中和することで炎症を抑えます
抗TNF-α抗体製剤 炎症を引き起こす生体物質であるTNF-αの作用を中和することで炎症を抑えます
抗α4β7インテグリン
抗体製剤
免疫に関わる細胞であるリンパ球上にあるα4β7インテグリンというタンパク質の働きを抑え、リンパ球が血管内から腸管の組織に侵入するのを防ぐことで炎症を抑えます

厚生労働省医政局経済課:バイオ医薬品・バイオシミラーを正しく理解していただくために
(医療関係者向け) 2019年2月作成
(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000496081.pdf)(2025年6月2日アクセス)

IBD LIFE

“IBD LIFE”では潰瘍性大腸炎・クローン病患者さんに向けて、食事や治療、症状に関する情報のほか、患者さんをサポートする情報を紹介しています。

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